派遣労働者とのトラブル対応

人材派遣会社では、通常の企業よりも、従業員トラブルが発生しやすい傾向があります。また、人材派遣には様々な当事者がかかわるため、派遣労働者とのトラブルが自社内の問題にとどまらず、取引先企業も巻き込んだ大きな問題になりやすい傾向もあります。

この記事では、主に人材派遣会社の皆様向けに、派遣労働者とのトラブルが問題になりやすい典型的なケースとトラブルへの対応方法について、人材サービス会社の法務部での勤務経験がある弁護士が解説します。

派遣労働者とのトラブルについてお悩みがある場合、まずは詳しい弁護士への相談をおすすめします。

1. なぜ人材派遣会社は労務トラブルが発生しやすいのか

人材派遣会社では労務トラブルが比較的発生しやすいといえます。もっとも、これは派遣労働者や派遣会社に必ずしも問題があるわけではありません。弁護士としての経験からすると、人材派遣の特性上やむを得ない事情があると考えています。

1.1 トラブルの発生確率が高い?

人材派遣会社では、自社の業務を行う労働者とは別に多数の派遣労働者を雇用しています。単純な確率の問題として、従業員数が多くなればなるほど、従業員とのトラブルが発生する確率は高くなります。

また、特に登録型の派遣の場合など、通常の雇用と比べると、派遣労働者側の会社への帰属意識が弱い傾向があり、関係性も希薄になりがちです。ちょっとしたボタンの掛け違いからトラブルが発生しやすい環境といえます。

1.2 トラブルが発生すると複雑化しやすい?

人材派遣では、人材派遣会社、派遣先企業、派遣労働者の三者の関係が常に密接にかかわっています。それだけで通常の雇用の場合よりも複雑です。

各当事者それぞれに考え方や方針があります。特に派遣先企業側と派遣労働者側が対立した場合、人材派遣会社としては、両者間の適切な調整が必要になり、労務管理が複雑化します。

一般的な労働関係法令に加え、派遣法も適用されるため、ルールも複雑です。派遣労働者による労基署や労働局などの監督官庁への申告もなされやすく、対行政への対応も必要になります。

このように派遣労働者の場合の従業員トラブルは、通常の労働者の雇用の場合よりも複雑化しやすいといえます。

2.人材派遣会社で発生しやすい4つの従業員トラブル

人材派遣会社で発生しやすい従業員トラブルの例は派遣法違反、賃金・残業代未払い、解雇・雇止め、ハラスメント・労災の4つです。

2.1 派遣法違反

人材派遣は、派遣法の複雑かつ難しいルールに沿って運用する必要があります。派遣会社の担当者がそもそも派遣法のルールを全く勉強していなかったり、法改正のキャッチアップができておらず、派遣会社や派遣先企業が派遣法に違反してしまう場合があります。

また、派遣先企業から要請に応じていたところ、知らず知らずのうちに違法行為をしてしまうケースもあります。

複数の派遣会社で経験を積んでいる派遣労働者の方が派遣法に詳しい場合もあり、派遣労働者側から違法の指摘を受け、問題が発覚することも珍しくありません。

2.2 賃金・残業代未払い

人材派遣会社でも、一般の企業のように労働時間の把握が不十分であったり、サービス残業が発生しているケースがあります。

また、人材派遣の場合、同じ職場や同様の業務を行う派遣先に多数の派遣労働者を派遣している場合があります。その際、本来労働時間として扱うべき時間について、人材派遣会社が法的な判断を誤って運用してしまい、実は多数の派遣労働者に未払の残業代が発生しているケースもあります。

このような場合、是正対応として、過去に在籍していた方も含め、多数の派遣労働者への対応が必要となるリスクがあります。

2.3 解雇・雇止め

一般の企業と同様、能力不足や業務態度、不祥事などによる解雇や雇止めが問題になります。

また、人材派遣の場合、派遣先トラブルでの解雇・雇止めや、派遣先との派遣契約の終了(未更新)をきっかけとする解雇・雇止めも問題になります。

これらについては、派遣法上のルールをよく理解したうえで派遣先と連携して対応することが重要です。

2.4 ハラスメント・労災

派遣労働者の場合、ハラスメントや労災の問題は、通常派遣先での就業時に発生します。人材派遣会社からすると、自社ではない派遣先で生じた出来事であることから、十分な自社での調査が困難となったり、派遣先との調整に苦労することがあります。

もちろん、人材派遣会社の一般従業員と派遣労働者との間でハラスメントなどのトラブルが生じることもあります。

3. 派遣労働者とのトラブルに適切な対応を取らない場合のリスク

派遣労働者とのトラブルに適切な対応を取らなかった場合、人材派遣会社へのダメージは甚大なものになることがあります。顧客企業を巻き込んだり、他の派遣労働者へ波及したりするとともに、採用活動に悪影響となります。

3.1 顧客企業を巻き込む

人材派遣は、人材派遣会社、派遣先企業、派遣労働者の三者間で成り立っています。そのため、派遣就業期間中に人材派遣会社と派遣労働者間でトラブルが発生した場合、派遣先企業にも当然影響が生じます。

また、派遣就業期間中のトラブルに派遣先企業が全く無関係ということも通常ありませんので、派遣先企業にとっても「派遣労働者」という自社で勤務する労働者とのトラブルが同時に発生することになります。

3.2 他の派遣労働者への波及

人材派遣では、各労働者が別々の派遣先で就業している場合は、派遣労働者間の横のつながりがほとんどないこともあります。このような場合は、派遣労働者とのトラブルが他の派遣労働者に波及するリスクが高いとはいえませんが、同様の働き方をしている派遣労働者が多数存在する場合の労務管理に不備があった場合には、問題が波及することになります。

また、複数の派遣労働者が同一の派遣先で就業している場合や、他社の派遣労働者と同一の派遣先で就業するケースも珍しくありません。このような場合に従業員トラブルが生じると、他の派遣労働者も巻き込む可能性が出てきます。次々と紛争の対象となる派遣労働者が増えていった場合、派遣先企業や人材派遣会社に与える事業上の悪影響は甚大です。

3.3 採用活動への悪影響

昨今、人材採用が困難なのは、人材派遣会社も同様です。労使トラブルが発生し、それがマスコミに取り上げられたり、SNSなどで情報発信された場合、自社の採用活動に重大な悪影響が出ることになります。

4. 労務トラブルの初動対応と取るべき予防策

4.1 紛争予防

まずは必要な書類や規程類の整備が必要です。たとえば、雇用契約書、就労条件明示書、就業規則などが重要です。

次に自社従業員の教育も重要です。人材派遣は法律のルールの枠内で適切に実施する必要があります。たとえば、「休業手当」など、日常業務の中で労働関係法令に基づく判断が必要な場面がよく出てきます。そのため、自社従業員に派遣法や労働関係法令に関する教育をしっかり行うことも重要です。

4.2 紛争発生後の初動対応

紛争発生時には、まず人材派遣会社内で派遣元責任者が中心となって社内で適切な情報共有、対応を行う必要があります。

次に派遣元と派遣先でも適切な連携を取る必要があります。情報共有は重要ですが、後で派遣労働者側から個人情報の漏洩であると指摘を受けないよう注意して対応する必要があります。

手に負えないと感じた場合には、早い段階から社会保険労務士や弁護士など、労働関係法令に詳しい専門家の力に頼ることも必要です。

5. 弁護士ができるサポート内容

弁護士は、人材派遣会社様の従業員トラブルの防止や解決のために、たとえば以下のようなサポートをご提供できます。

5.1 契約書、規程類のチェック

契約書や規程類はトラブルが発生した場合の解決の拠り所になるものであり、非常に重要です。

人材派遣では、労働者の雇用に通常必要な書類に加え、派遣法のルールに沿った各種書式の整備も必要です。

労働者の雇用時に通常必要な書類、たとえば、雇用契約書であったり、就業規則についても、基本的には派遣労働者専用のものを作成するのがお勧めです。一般の従業員と派遣労働者では、仕事の内容や働き方が全く異なるため、無理に一つの内容にまとめようとすると、かえって誤解が生じやすい内容になってしまうことがあります。

弁護士がこれらの書類や規程を事前にチェックすることで、紛争を予防し、また紛争発生時の適切な解決の拠り所を整えることができます。

5.2 労働者や派遣先企業との対応の助言

派遣労働者とのトラブルが発生した場合、トラブルになっている派遣労働者や派遣先との対応が必要になります。

お客様から、これらの対応について「どのように対応してよいかわからない」「先方に向けた手紙やメールの文案を事前にチェックしてほしい」というお声をよくいただきます。トラブル対応はイレギュラーな事態ですので、不安を感じていらっしゃることが多いです。

トラブルになっている相手に言うべきことを正確に文書で伝えることは容易ではありません。また、トラブル発生前後の手紙やメールでのやりとり内容は、裁判などの法的手続に移行した場合の重要な証拠になることがありますので作成時には細心の注意が必要です。

弁護士がこれらの対応をサポートすることで、適切に、かつ担当者の方の心理的な負担を軽減しながらトラブル対応をすることができます。

5.3 代理人としての対応

派遣労働者側に弁護士や労働組合がついた場合や、話し合いが平行線となり、次のステージとして法的な手続を取る必要がある場合には、弁護士が会社の代理人として活動することが必要になります。

代理人として対応してくれる弁護士を一から探すのは大変です。資料をそろえて経緯を説明するだけでかなりの時間と労力がかかります。普段から顧問弁護士として日常的に相談している弁護士に代理人として対応してもらえると、スムーズかつスピーディな対応が可能となります。

5.4 研修講師

日常の業務をするうえで、常に弁護士に相談しながら対応することはできませんので、従業員が自ら人材派遣を適切に行える必要があります。そのためには基礎的な法律知識やトラブル発生時の初動対応に関する知識が必要です。

また人材サービス業界は比較的法改正も多いため、法改正情報のキャッチアップも必要です。

弁護士が研修講師を担当することで、正確な法的知識や、実際のトラブル事例なども踏まえた実践的な知識を身に着けることもできます。研修講師として従業員と弁護士に面識があると、いざというときの対応もスムーズです。

6. まとめ:派遣労働者とのトラブルに関するご相談は、よつば総合法律事務所へ

派遣労働者とのトラブルは、ビジネスに重大な影響を与えるだけではなく、他の派遣労働者や派遣先企業との関係性にも気を付けながら対応しなければなりません。

また派遣労働者側がこれまで何度か法的なトラブルを経験しており、一般の従業員より法律に詳しいと感じられるケースも増えています。

このように人材派遣会社での適切な労務管理の難易度は非常に高いといえます。

事前の予防策やトラブル発生後の対応のサポートを弁護士に依頼することで、安心安全に業務を行うことができます。

よつば総合法律事務所には、人材サービス会社の法務部での業務経験がある弁護士が在籍しています。多くの人材サービス会社の法律問題もお取り扱いしています。

派遣労働者への対応で悩んだときは、まずはよつば総合法律事務所にお問い合わせください。

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※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。